全国の一級水系ダムにおいて、豪雨に備えて利水容量の一部を事前放流できるようにルールが改められ、今年の出水期より運用が開始されました。

熊本県の球磨川において、記録的な豪雨により7/4(土)の明け方に氾濫が始まり、昼頃に1箇所で堤防が決壊しました。

官邸HPに、全国の各水系の「水害対策に使える容量」の増加量が公開されています。
ダム容量_項目
ダム容量_球磨川

球磨川水系は、現行の「洪水調節容量」1800万㎥に新たな「洪水調節可能容量」2900万㎥が加わり、「水害対策に使える容量」4700万㎥に増大しました。治水・利水を併せた全体の「有効貯水容量」4900万㎥の97%にもなり、全国平均の60%を大きく上回り、利水権者との調整が非常にスムーズにできたと言えます。

国交省HPに、球磨川流域で最大の市房ダムの1時間毎の流入・放流量が公開されています。
流入放流628-704

7/2までに事前放流は見られず、7/3~4の流入・放流量を抽出し、貯水変化量を計算してみました。
ダム流入放流貯水

以下が分かります。
 ・豪雨の直前約1日の事前放流は263万㎥だった
 ・洪水調節効果は「水害対策に使える容量」4700万㎥に対し1207万㎥だった
 ・河川氾濫後、貯水量を581万㎥減らした

結果だけを見ると、ルール改正された事前放流が実行されておらず、洪水調節効果は「水害対策に使える容量」どころか従前の「洪水調節容量」より少なく、また河川氾濫・堤防決壊後に洪水被害域の浸水量を増やしていました。理由は分かりません。

私の本意は、当日のダム操作者やダム操作マニュアルの作成者を非難することでは決してありません。50年来の関係者の念願が叶って実現した事前放流ルールが有効活用され、洪水被害が少しでも減ることを願うのみです。