(株)ライトレール

交通に関する情報やイベント案内を発信します。

2014年01月

 JR北問題に関して、全国で22日(水)の6紙に続き、23日(木)は10紙、24日(金)は2紙が社説で取上げ、同内容は1つもありません。全国的に関心が高く、地方の公共交通の未来を拓く議論に結び付くことを願っています。
 23,24日分を整理し、先のノートでお知らせした22日分と同様のマークを付けました。
 残念ながら、JR北問題の根幹原因に迫るものや、地方の交通を維持・活性化する仕組みを提言する建設的なものはありません。一方、JR北はコスト削減のために社員を民営化前の4分の1、発足時の約半分の7,000人に減らしたとの具体的な記述があり、現場従事員への聞取りでは人手不足と予算不足の訴えが多かったと言います。
 問題解決は、根幹原因の抽出と解決策の実行の2段階に分かれます。後者は、様々な代替案が考えられ、また立場により利害が異なるので意見が分かれます。しかし前者は、客観的事実を詳らかにすることにより、万人共通の理解を得られるはずです。朝日「耕論」に解決策案も掲載されましたが、ここでは触れず、根幹原因に絞ってお伝えします。
 根幹原因「経営安定基金の運用益減と高速道路無料化等の民業圧迫により財務状況が厳しくなり、賃金抑制・要員削減・投資先送りせざるを得なくなったこと」は、私の主義主張ではなく、客観的事実に基づく論理的帰結です。3日間で18本の社説での多くの指摘とも合致します。
 北海道内の鉄道経営が赤字となること自体は、責められることでも好ましからざることでもありません。問題は安全かつ便利な交通サービスを適正なコストで実現できるかであり、コスト過小で安全や利便性を損なっても、放漫経営でコスト過大でもいけません。道路も空港も港湾も、北海道内で収支計算したら同様に赤字です。それでも資金が回る仕掛けになっているから、大きな問題は生じず社会的に持続できているのです。
 JR北は、能率的な経営の元で適正な交通サービスを実現し500億円弱/年の赤字が生じることを前提に発足しました。赤字を減らすには、不採算路線の廃止・運賃値上げという選択肢がありましたが、そうしないという運輸政策を日本国として選び、経営安定基金6,800億円の運用益で赤字補填することとしました。
 その後、想定外の低金利となり、2011年に若干の増額措置はされたものの不充分で、運用益は200数十億円/年も減りました。さらに、税金を投じた前自公政権の高速1000円施策と民主党政権の高速無料化により、最大数十億円/年の減収を強いられました。JR北の経営陣や社員の努力不足が原因ではなく併せて250億円/年の財務悪化が生じ、それでも経営破綻させないには賃金抑制・要員削減・投資先送りせざるを得ませんでした。
 1人当り人件費を1000万円/年とすると、発足時より2500人少ない人手で、高速化・増便により増えた業務量を賄ったということです。社員減の6000人と人数が異なるのは、外注化により以前は社員が担った業務の一部を人件費の低い外注社員にシフトさせたからです。
 根幹原因が万人共通の理解となれば、石破幹事長の言われる「誰が経営しても無理」が正しく、経営陣を一掃して外部人材を登用するだけでは問題解決できないことが分かります。日本国として、北海道を見捨てず、不採算路線の廃止・運賃値上げという運輸政策を採らないならば、500億円弱/年の赤字を賄う財政措置を用意しなければいけません。
 なお、私はJR北の関係者をどう処分すべきかに関しては中立です。外部要因ばかりを挙げ、JR出身の内輪仲間として関係者を免罪すべきと主張しているわけではありません。逆に、関係者を徹底的に断罪すべきとも考えません。
 18本の社説に表れているように、根幹原因の理解が社会に広まっていません。根幹原因の理解が広まり、それを踏まえた解決策が立案・実行され、さらには地方の公共交通の未来を拓くことにお役立ちしたく願っています。

 不祥事の続くJR北に対する国の厳しい処分が発表され、昨日の読売・朝日・毎日にて1面トップでした。各紙の社説を全て整理している便利なサイトを活用し、JR北問題を取上げた読売・朝日・毎日・北海道・信濃毎日・高知新聞の社説を整理しました。
 各紙ともJR北を徹底糾弾し国の厳しい処分は当然とする一方、根幹原因に迫る分析や論説は不充分です。以下にマークを付けました。
  ①根幹原因の解決に向けた問題提起
  ②  〃  の結果として起きた重要な事実の指摘
  ③  〃  を斟酌しない表面的な論評
  ④  〃  の解決後に適正に対処して解決できる問題
 ①は、一般論・抽象論ばかりで具体論に欠けます。地元紙の北海道新聞が、北の鉄路を守りたい気持ちに基づき、「十分な対策には資金と人材の裏付けが欠かせない」「政府も単に命令を発するだけでなく、現路線の維持を前提に具体的な支援策を示すべき」と問題提起しているくらいです。
 ②は、根幹原因を明確に指摘するものはありません。根幹原因は、経営安定基金の運用益減と高速道路無料化等の民業圧迫により賃金抑制・要員削減・投資先送りせざるを得なくなったことです。その結果として起きた重要な事実がいくつも指摘されています。
 ③は、何紙もが社長解任や外部人材登用を求めますが、自民党の石破幹事長が「誰が経営しても無理」と発言しています。 根幹原因にメスを入れない限り「誰が経営しても無理」ですし、メスさえ入れれば「適任者が経営すれば抜本解決」できます。
 ④は、何紙もが組合問題を挙げていますが、組合が先鋭化した根幹原因は、賃金抑制・要員削減を進めて報酬と労働条件を悪化させた上に、現場が真摯に求めた工事要求の一部未実施を20年間続けたことです。組合問題は原因ではなく結果であり、賃金・要員・投資の適正化こそが求められます。
 私も取材を受けた朝日新聞「耕論」にて、仁杉元国鉄総裁はご自身の体験に基づき「安全を確保する大前提は端的に言うとカネと人。お金がなければ、たとえやりたくてもできない。労使関係も最終的には財源次第という面がある。」と言われました。
 新年ご挨拶の3つ目にJR北問題を挙げました。社会の関心が高まり、JR北の経営を抜本的に改革する、もっと広く言えば地方の交通を維持・活性化する仕組みを構築する、1987年の国鉄改革で積み残された問題を解決するチャンス到来です。

明けましておめでとうございます。皆様のお陰で、弊社は創業以来9回目の新年を迎えられました。
 昨年並びに新年早々、交通の未来を拓く切っ掛けとなり得る様々な出来事や弊社の取組みがあり、年賀状にて「風が吹いてきましたね。」といった励ましも多数お受けしました。メディアで取上げられる機会にも恵まれ、創業以来の活字化されたものを以下の3_メディア.pdfに整理しました。テレビ・ラジオは大々的な公開はできないので、ご関心のある方は個別にご連絡下さい。
http://www.LRT.co.jp/00kaisya

① 2020東京五輪
 20年間を失い閉塞感の漂うこの国が、未来に向って希望と勇気を持ち、再び輝きを取戻せる機会がやって来たと信じます。
 50年前の東京五輪を機に、東海道新幹線・名神高速・首都高・東京モノレール・環七・国道246号といった、次の時代の繁栄の礎となった交通インフラが整備されました。2020年に向け同様に交通整備が期待されますが、道路よりも鉄道の整備の方が国民の期待も投資効果も高いのではないでしょうか。そして、実行すべきは新線建設等の大規模投資でなく、既存インフラを有効活用するために知恵と資金を投ずることです。
 弊社は、満員電車の解消をシンボルに具体的なアイデアを多数蓄積しており、以下のメディアにてお取上げ願えました。
 6/27,28 日経ビジネス ON LINE
 8/2   TBS「みのもんたの朝ズバッ!」
 9/10   東京新聞
 9/17   J-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」
 10/26  ベストカー
 11/24  東京新聞
 また、10/25にSmart City Week 2013、12/19にHills Breakfast(以下にて動画を公開)にてプレゼンする機会がありました。
http://scw.nikkeibp.co.jp/2013/conference/session.html?s=O-1-17
http://scw.nikkeibp.co.jp/2013/conference/session.html?s=O-2-15
http://www.LRT.co.jp/131025SCW
http://hillsbreakfast.roppongihills.com/event/volume_34
 1/15,29には、工学院大学オープンカレッジにてお話します。
https://ssl.smart-academy.net/kogakuin/open/course/detail/4011531/
https://ssl.smart-academy.net/kogakuin/open/course/detail/4011532/
 2020東京五輪を機に鉄道イノベーションを実現するチャンス到来です。

② 沖縄の交通改善
 年末、沖縄県知事が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に向けた政府の埋立て申請を承認したことにより、米軍基地の返還が現実味を帯びてきました。
 昨年、沖縄県主催の基地跡地コンペにて、大成建設(株)と(有)ニライ・カナイ研究所と合同で最優秀賞を受賞しました。以下の2つ目のリンクは1つ目のリンクの抜粋です。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kikaku/chosei/atochi/compe/competop.html
http://www.LRT.co.jp/130202kiti/
 コンペの準備以来の1年間に13回訪沖して43日間滞在し、交通を中心に各所を見て回り、多くの方のお話を伺い、資料を読み漁り、データを追いました。それに基づき、「移動時間の短縮」を志向したバス路線再編・モノレールの利便向上・中南部鉄軌道ネットワーク・南北縦貫鉄道の具体的提案を、沖縄しまたて協会発行の建設情報誌「しまたてぃ」No.66へ寄稿しました。また、地元で1時間講演したものが沖縄ケーブルテレビで数回放映されました。以下の2つ目のリンクは1つ目のリンクの抜粋です。
http://okiaruki.com/simatate/03pdf/pdf.htm
http://www.LRT.co.jp/1309sima/
 沖縄への鉄道導入の検討も本格化し、沖縄の交通を抜本的に改善するチャンス到来です。
http://news.livedoor.com/article/detail/8402979/

③ JR北海道問題
 JR北海道の線路や車両の保守体制の不備が大きな問題となりました。以下の取材を受け、取上げられました。
 9/23 テレ朝「モーニングバード!」
 9/23 テレ朝「スーパーJチャンネル」
 9/25 東京新聞(共同通信の配信)
 9/25 テレ朝「報道ステーション」
 JR北海道の杜撰な業務体制を非難する論調ばかりの中、取材を受けるたびにJR北海道を窮地に至らしめた構造的問題を丁寧にご説明し、朝日新聞10/25付「耕論」にて、それを整理したものを掲載願えました。多くの方からお受けしたご意見や激励とともに以下に整理してあります。
http://www.LRT.co.jp/file/131025JRnorth.pdf

  「ピンチを転じてチャンスと為す」と言います。社会の関心が高まり、JR北海道の経営を抜本的に改革する、もっと広く言えば地方の交通を維持・活性化する仕組みを構築する、1987年の国鉄改革で積み残された問題を解決するチャンス到来です。

④ ひたちなか海浜鉄道湊線の延伸構想
 茨城県のひたちなか海浜鉄道湊線は昨年、開業100周年でした。順風満帆の歴史ではなく、2007年に廃線の危機を迎え、弊社は茨城県とひたちなか市から再生に関する調査を受託し、存続の決定に一定の役割を果たせました。
http://www.LRT.co.jp/070527minatosen/
 そして、当時の調査が改めて評価され、昨年、延伸調査を受託しました。再び頻繁に現地へ行くようになり、12/14読売新聞 茨城版にインタビューが掲載されました。
 湊線は、地方鉄道としては、すこぶる好条件に恵まれ、延伸の機運も盛上りつつあります。富山ライトレールに次ぐ、地方鉄道の利便向上を核とした地域活性化の成功モデルを構築するチャンス到来です。

⑤ 東海道新幹線の品川折返し
 3日(金)早朝の有楽町での沿線火災の影響により東海道新幹線が終日マヒしました。品川で折返し運行できたのではないかと話題になり、弊社は、非糾弾・問題解決・効率確保・実現可能・現場把握・技術理解というスタンスで、適切な準備と訓練をすれば品川折返しによりほぼ定時運行できるという具体的な提案を情報発信しています。
http://togetter.com/li/611375
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140107-00000504-san-soci
 残念ながら、東海道新幹線に限らず多くの鉄道が、「不通区間が生じた場合に運行可能な区間でスムーズに折返し運行」できません。首都圏で相互直通運転や長距離運行が増えるほど、はるか彼方のトラブルの影響を受ける機会が増え、問題解決のニーズが高まっています。
 「不通区間が生じた場合に運行可能な区間でスムーズに折返し運行」できるようにするには、多くのハード・ソフトの対策の検討・実行が必要です。本件を機に、鉄道が安定的な交通システムとして社会に貢献する上で、重要でありながら今まで手付かずだった問題を解決するチャンス到来です。

⑥ 鉄道講座
 工学院大学の鉄道講座は、2009年7月に開講し、私は当初より講師に加わり、弊社の佐々ともども活性化に取組んできました。2011年10月に新シリーズ第1期が開講し2年間の長丁場を終え、約25名のコアメンバーが定着しました。
 そして、4月からの第3期開講に向け、11日(土)に無料特別講座を開催します。曽根特任教授の講演「鉄道事故と信頼回復」と今後の講座の紹介に引続き、Q&Aの時間を充分に取り、懇親会も開催します。既に多くの方のお申込みがありますが、鉄道の未来に関心をお持ちの方へご参加をお勧めします。
http://www.LRT.co.jp/140111tetudou/muryou.pdf
 工学院大学は鉄道講座を目玉講座として発展させる方針です。弊社は無料特別講座のプロモーションと鉄道講座の改良提案を受託しました。鉄道の未来を拓く人材と熱意と知恵が集まるプラットフォームを構築するチャンス到来です。

⑦ 交通政策基本法
 以上6項目の全てに関わりますが、昨秋、交通政策基本法が成立しました。
http://response.jp/article/2013/11/29/211924.html
 交通基本法案が民主党政権時代に閣議決定しながら国会で廃案となり、自公政権へ戻った後、超党派の取組みにより名称と内容が一部変更されて成立しました。社会の注目はそれほど集まりませんでしたが、この法律の目指すことを実現できれば、日本の交通が変り、社会が変り、生活が変り、産業構造が変ります。
 「移動権」の保障が明文化されず残念との意見もありますが、それに伴う負担や副作用への理解がないまま明文化されると、「低負担高サービス」という持続不可能な要求が横行しかねません。4年前に、負担や副作用への配慮なく「移動権」ばかりが強調された法案へのパブコメの際に弊社が提出した意見書をご紹介します。
http://www.LRT.co.jp/file/100507iken.doc
 大都市・地方ともに、生活利便を確保し、交流を活発化し、産業を発展させ、安全かつ環境にやさしい交通を実現するチャンス到来です。

交通の未来を拓くために
 以上7項目のそれぞれ末尾を「~するチャンス到来です。」とし、韻を踏みました。今回は書かなかったことも含め、交通の未来を拓けるチャンスが本当に目白押しです。弊社はそれぞれに対して様々な蓄積を重ねており、コンサルとしてお役立ちできることを念願し準備万端です。
 交通ビジネス塾の開催は67回を数え、次回は28日(火)です。毎回、交通の未来を拓くための有意義な意見交換が続き、気付きや出会いが生まれています。
http://www.LRT.co.jp/kbj
 日経ビジネス ON LINEでのインタビューを機に、facebookとTwitterでの情報発信を本格的に始めました。交通に関わるお堅い話題に徹しています。ご関心のある方は、友達申請またはフォロー下さい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20130625/250149/
https://www.facebook.com/LightRail
https://twitter.com/Light_Rail
 弊社の一貫した主張は「良質な交通サービスを低コストに実現」です。それに共鳴下さる交通事業者・関係メーカー・行政・コンサル・デベロッパー・商社・研究機関その他の皆様、ぜひ弊社へご相談・ご用命下さい。交通のあるべき姿を踏まえ、実現に向けたプロセスをご提案し、一緒に汗をかき、頭をひねり、問題解決に向け全力投球します。
 長文にお付合い下さり、ありがとうございました。未来を見据えつつ、目前の一歩一歩を確実に踏みしめ、交通の未来を拓くため本年も精一杯取組んで参ります。変らぬご愛顧、ご指導、ご鞭撻をお願い申上げます。

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